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かみがもばなし
 より

上賀茂昔話

 『 豆 塚 ・ ま す 塚 』  
 

それゆけ!上賀茂探検クラブで
人形劇もやってみました

 
  むかしむかし、深泥池のそばに、大きなほら穴があったげな。

  あるみぞれの降る寒い晩、一人の男がこのあたりを通りかかったそうな。

  すると穴の中からチラチラと灯かりが見えてな、誰ぞいるのかな、と思って近づいてみると、

  中で二匹の鬼がおそろしい話しをしてたんやてー。


   「いっぺん久しぶりに村へ行って百姓どもの作った米をとってきて、酒でも喰らおうか・・・・」

  「ウン、それはええ思いつきや。田吾作んとこの子牛も今がちょうど食い頃やしな。

   ついでに村の娘でもかっさらってくるか」


  「それはおもろい。そうしよう。そうしよう」

  と白い牙をむいてゲラゲラと笑ってたげな。

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  さあ、男はびっくりしてしもうて

  「こりゃえらいこっちゃ、えらいこっちゃ、ほんまにえらいことになりよった・・・」

  と村の庄屋さんとこへ飛んで行って、今聞いた話しを全部うちあけたらな、庄屋さんも

   「そいつぁ、えらいこっちゃ」 と、心配で心配で眠れへんかったんやて。

  そしたらなあ、ばあさんがな 「ほんなら日頃信心している貴船さんへ行って相談して来はったら・・・」

   と言うので、
その晩、腹巻の下にばあさんの作った納豆もちを入れ、とっくりに御神酒を入れて、

  上んだの貴船神社へ出かけることになったげな。

  神社につくと 「貴船の神さん、神さん、今、加茂ではかくかくしかじかで村中大さわぎや。

  どないしたらええか教えておくんなはれ」 ポンポン、両手をたたいておがんだんやて。

  そのうち夜も更けてきて、寒うもなってくるし、ついつい神棚のおみきに手がのびてな・・・・。  

  そんなこんなのうちに晩もおそうなって、ふた時ほどした頃や、急に神棚に白い光がさしたと思ったらな、

   「加茂の庄屋、話はようわかった。そもそもあの鬼は、この貴船神社の端の穴が深泥池まで続いていて、

  そこを通って村へ行きよるのやさかい、穴の出口と入り口を塞いでしまうことじゃ。

  それから『鬼の目突き』というてな、柊の先にイワシの頭をつけて家の戸口にむすびつけておくのじゃ。

  また田の神さんにはズイキで作ったなますをしんぜて、鬼が来たら田を守ってもらうよう、頼んどくことじゃ。

  田の神さんには、わしの方からも一言いうとくさかい・・・・」 というと、スーッと消えてしもたんやて。

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  ハッと庄屋さんが気がついた時、外はだいぶん明かるうなっていたそうや。

  おみきを飲みすぎて寝てしもうて、夢を見てはったんやな。

   村にもどった庄屋さんは、村中の人を集めてよんべ神さんに聞いた話をしはったんやて。

   ほんで村中の豆を集めて、鬼退治のしたくをはじめたんや。  

  そんなこんなのうちにその日がやってきたげな。ちょうど二月の寒い節分の晩やった。

  穴から出てきた鬼は、何や村の方からええにおいがしてくるさかい、

  それにつられて家の前までくると、うまそうなイワシの頭があった。

  思わずガブッと食いついた拍子に、目に火がついたように痛うなった。柊のトゲが目に刺さったんや。

  思わず鬼が「ウォーッ」とほえた時、 「それ今や!」 という庄屋さんのかけ声で、

  村中のもんが総出で鬼のきらいなイリ豆を、鬼めがけて投げつけたそうや。

  目はつぶれてしもうて見えへんし、後ろから豆は飛んでくるし、

  鬼はほうほうのていでもとの穴へ逃げ込んでしもうたんやて。

  それで村人は穴にいっぱい豆を入れてふたをして、その上に山盛りに土積んで「豆塚」と名づけたそうな。

  また入り口の方は、豆を入れてきた桝を埋めて、「桝塚」と名づけたそうな。  

   土の中にしか住めんようになった鬼は人間に仕返しをしようとおもって、地べたの中であばれ回っとったんやて。

  それでとうとう田の神さんも怒って、鬼をウンゴロモチ(もぐら)にしてしもうたそうや。

   もぐらにされてしもうた鬼は、それでもまだしょうこりもなく田や畑に穴をあけては悪いことをしよるさかい、

  節分が過ぎると子どもらが棒や空き缶を持って 「ウンゴロモチや おやどのか まんまくどうの おんまえどう!」

  と掛け声かけて、もぐらになった鬼を追い出したもんや。

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   それから加茂では節分になると、半紙に一銭銅貨と年の数だけ豆を包んで、

  どこか身体の悪いところをさすって、田んぼの四隅にそっと置いとく風習ができたんやて。

  そしたら不思議に悪いところが治ったそうや。鬼が豆といっしょに病気も持っていってくれるんやて。

  親から子、子から孫へと語りつがれた、このウンゴロモチという子どもの祭りは、

  今も、西賀茂の一部で受けつがれている。  

  節分のあくる朝は立春。やがて「さんやれ」がやってきて、田んぼのあぜ道にもふきのとうの頭が見えてくると、

   上賀茂の里にもようやく春の気配が近づいているということやし・・・・・。