1930 年代のアメリカでは、デザイナーを雇って、製品のスタイリングを変えることが流行した。
機構を変えなくてもスタイリングを変えるだけで、売上を上げることができるため、多くの企業がデザインを活用したのである。このようなアメリカの現状を視察した松下幸之助は、1951 年にデザインの重要性に気付き、社内に意匠部門を設置している。これを皮切りにして、各企業は社内にデザイン部門を設け、多くの社内デザイナーを抱えて、デザインに対する取組を行うようになっている。このように、我が国の企業は早くからデザインの有用性に気付いていたのである。
しかし、経営の視点からデザインの意義や効果が体系的に語られることはなかったに等しい。
このため、デザインは製品の姿・形に色艶を与えるためのデザイナーの専門的なテクニックであり、経営者が取り組むべき重要な経営課題であるとは認識されてこなかったのである。このような状況は1980 年代に入ってから変化する。経営学の分野において、経営者が真剣に取り組むべき重要な戦略課題としてデザインが注目され始めたからである。以後、欧米の経営学者達を中心に、経営とデザインの関係に関する研究が蓄積されてきたが、中でも、デザインの果たす役割や効果については、ハーバードビジネススクールのRobert Hayesの整理が参考になる。Hayesによれば、企業活動におけるデザインの役割には、facilitator,differentiator, integrator,communicatorの4つの側面があり、それぞれ以下のように要約される。
(1) Design as Facilitator(競争力促進ツールとしてのデザイン)
考え抜かれたデザインは、製造コストを下げ、製品の品質や信頼性を高めるとともに、メンテナンスコストやリードタイムの削減を可能にする
(2) Design as Differentiator(差別化ツールとしてのデザイン)
機能、品質、価格、製造コスト、開発サイクルが似通った競合商品が溢れる市場においては、優れたデザインが競合からの差別化要素となり、顧客に選ばれる商品となる
(3) Design as Integrator(統合ツールとしてのデザイン)
良いデザインを生み出す過程で、デザイン、エンジニアリング、マーケティング、製造といった開発の諸段階における人と機能が統合されることで、部門間の壁がなくなり、開発プロセスの合理化が行われる
(4) Design as Communicator(コミュニケーションツールとしてのデザイン)
デザインは、企業のメッセージ、価値観、イメージを社内外に伝達し、共有させるHayes は経営に与える効果を網羅的に説明してはいないが、4つの役割から期待されるデザインの効果の整理を試みれば、表―1になろう。
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