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sikaku1.jpg(648 byte)  言語実験工房」備忘録


□ このページでは、「言語実験工房」の会合の記録を掲載します。(文責・荒木)

まず、「言語実験工房」の成り立ちを簡単に紹介します。2006年春先に、田中宏輔氏から、私・荒木時彦に、現在における実験的な詩を考える会を催さないか、との提案がありました。そこで、私・荒木時彦は、以前から参加していた「りりQ合評会」(平居謙氏主催)で知り合った詩人でオーストラリア詩の研究者でもある湊圭史氏に協力を依頼しました。湊氏は快くその誘いを受けて下さり、田中宏輔氏・湊圭史氏・荒木時彦による、第1回「言語実験工房」会合が開かれることになりました。以下、現在までに行われた「言語実験工房」会合の記録を公開いたします。

□ 第1回会合(2006年4月22日)

  1. 現在における詩の「実験性」について話し合った。これまで行われてきた実験詩と、我々がこれから考える実験詩との関係性などが話し合われた。

  2. 湊によるアメリカでの、主にウェブ上の実験詩のサイトの紹介があった。

    * Electronic Poetry Center
    アメリカの実験詩を公開しているウェブサイト
    http://epc.buffalo.edu/

    * UbuWeb
    ニューヨーク州立大学のバッファロー校がホストのサイト
    http://www.ubu.com

    * The Academy of American Poets
    普通のアメリカ詩のサイト(音声ファイル有り)
    http://www.poets.org/

    * 『すばる』での豪詩人のインタヴュー
    http://subaru.shueisha.co.jp/html/person/p0604d_4.html

    * e-magazine の Corditeのサイト
    http://www.cordite.org.au/

  3. アメリカでの実験詩のウェブサイトを参考にしつつ、ウェブサイトを立ち上げることを決定した。この企画および我々3人のグループ名を「言語実験工房」と命名した。第1段階として、「言語実験工房」発足宣言書を作成しウェブサイトに掲載するとともに、他の詩人の作品を収集することとし、湊を連絡係とすることにした。また、我々3人の実験詩を作品例としてサイトにアップすることにした。

□ 第2回会合(2007年1月6日)

  1. 荒木が、同人誌『分裂機械17』に掲載された青木栄瞳さんの「マジョ・リカ「解難録」X 天脳説 2006・4・27宇宙に作曲家はいるのだろうか*(詩人・EIMEの量子論的並行宇宙論)序章」をサイトに掲載してはどうかと提案。3人の合議の結果、掲載を決定。

  2. 湊が、2006年10月に催されたポエム・バザールにて得た同人誌「雲雀料理 創刊号」掲載の六崎杏介さんの「チェロ・ルウ、トリア」をサイトに掲載してはどうかと提案。3人の合議の結果、掲載を決定。

□ 第3回会合(2007年3月4日)

  1. 第3回会合の前に、荒木が松本秀文さんに寄稿を依頼したところ、メールで作品「彼岸の消滅」を頂いた。これを田中、湊、両氏にメールで送付したところ以下のような意見を頂いた。

    田中:
    面白かったです。モダニズムをやる意義が今日にもあるのかどうかの試金石になるかもしれません。

    湊:
    松本さんの作品、実験的か、というと、僕はちょっと?マークかなと思います。言葉の出かたが落語か講談みたいで、俗語とは言えないけれども、非詩語を織り込んで詩をつくっていく感じ、面白いのですが。四角(と丸)の部分は荒川洋治の〈ボーセンカ〉というのに近いかなと思います。「ここがすごいというところに傍線を引いた」といいながら、デタラメに線を引いているだけというやつなのですが、言葉(と言葉の流れ・断絶)に注意を向けさせる効果はあるかなと。その点で言えば、フォントのサイズの変化も同じ効果を狙っているように思います。書きもののうえで、パフォーマンス詩の効果を出そうとしているのかな(落語・講談調というのもそのあたりの印象か)。四角のなかを入れ替える、というのはこのかたちで読むと、ぼくはちょっと思いつかないです。ギミックをひっきりなしに投入することで、面白く読ませようというサーヴィス精神かな。ちょっと飛来犬さんを連想。 とりあえず現時点では、×、かな。以上、みなとの意見です。

    3人でメールのやり取りをした結果、集まって話し合おうとうことになり、第3回会合を持つに到った。

  2. 「彼岸の消滅」について3人で協議を行ったところ、この詩はモダニズムの手法を用いたものであるが、新しい点が3つある点に注目した。
    1) 名前の一部を□でかこんでいる
    2) シャドウを用いている
    3) 「愛」という字を○でかこんでいる
    つまり、モダニズムの時代においては、活版印刷の技術でできなかったことを、現在のパソコンのワープロソフトの機能により、実現しているということである。モダニズムをやる意義が今日にあるのかどうかの試金石になる作品といえるという結論に達し、サイトへの掲載を決定した。

□ 第4回会合(2007年7月21日)

  1. 第7回ポエム・バザール(2007年10月7日)に、「言語実験工房」のパンフレットを無料で配布することを決定。

  2. パンフレットには、「言語実験工房」発足宣言書とともに、「言語実験工房」からの提案を記載することを決定。内容は、書店店頭での詩集の注文や、図書館に詩集をリクエストして、書店店員や司書の方々に詩の重要性を喚起し、詩の棚の充実を図る、などが提案された。提案文は湊が担当。

  3. パンフレットは、A4表に発足宣言書および提案を掲載し、裏には「言語実験工房」サイトに掲載されている詩の抜粋を掲載することとした。デザインは荒木が担当。

  4. 湊が松本秀文さんの詩集『鶴町』に入っている「ほら僕らはこんなにも数字を見ている」という詩が面白いのでサイトに掲載してはどうかと提案。合議の結果、掲載を決定。

□ 第5回会合(2007年8月29日)

  1. ポエム・バザールに向けてパンフレット作成の準備を行った。

  2. 湊の作成した「言語実験工房」からの提案文を3人で検討。湊がマイナーチェンジを加えて後にメールで他の二人に送ることを決定。

  3. 荒木の作成したパンフレットの表紙デザインを検討。デザインは決定。提案文は、湊からメールで送られてくるものに変更することになった。

  4. パンフレット裏面に掲載する詩について話し合った。田中、湊、荒木の3作に加えて、青木栄瞳さん、六崎杏介さん、松本秀文さん、の3作品、計6作品を掲載することに決定。各50部印刷することとした。

  5. 河原町ビブレのロフトにて印刷用紙を購入。1作品1色とし、計6色の用紙を購入した。

  6. ポエム・バザールにて

□ 第6回会合(2007年11月4日)

  1. 湊が事前にCharles Bernstein, "Experiments"(http://writing.upenn.edu/bernstein/experiments.html)の抄訳を用意。抄訳は、内容別に分類されていた。この分類がわかりやすいことを確認した。「言語実験工房」のサイトに掲載するには、解説を付記すると共に、バーンスタイン氏の実験以外のものを新たに加える必要があるとの意見がでた。また、著作権を得るために、湊からバーンスタイン氏へ、掲載許可の確認のメールを送ることとした(翌日、湊がメールで連絡したところ、掲載許可の返事があった)。

  2. 湊が第5回会合の後、京都市中央図書館に幾つかの詩集をリクエスト。結果、荒木時彦『静かな祝祭 −パパゲーノとその後日談』が入ったことを確認。引き続き3人で詩集のリクエストを行うことを決定。

  3. 田中から「言語実験工房」会合の備忘録をサイトに掲載してはどうかとの提案があった。合議の結果、掲載を決定。担当は荒木。

  4. 田中から「●詩(仮称)」「百行詩」をサイトに掲載してほしいとの要望があった。合議の結果、掲載することに決定。

  5. 荒木から実験詩に関する断章をサイトに掲載してはどうかとの提案があった。内容は、実験詩のついての覚書、過去の詩人の作品で実験的であったと思われるものの紹介、等。合議の結果、掲載を決定。

  6. 3人で過去の経験を10行書き出し、それらを合わせた30行の文章から言葉を選び、切り貼りし、3人がそれぞれ10行の詩を作る相互改作を行った。これを湊が持ち帰り、さらに同じ作業を繰り返すことで10行の詩を作ることとした。これをサイトに掲載することを決定した。

  7. サイトにカウンタを設置することを決定。また、他サイトからのリンクを充実させることを決定。1〜6の作業が終了した時点で、他の詩人の方々にサイト更新のお知らせとリンクのお願いをメールで送付することを決定。

□忘年会(2007年12月28日)

  1. 湊の提案で、チャールズ・バーンスタイン「実験リスト」の21「共同創作」を行なった。同時に三人が、一人は質問、二人は答えを書く。また、一人が答え、二人は質問を書く。計6回の実験を行った。

  2. 田中から、チャールズ・バーンスタイン「実験リスト」の68「色の散歩」を応用して、色の三原色を用いて「○色の○○」というものを作っていくという提案があった。湊から、三原色では限界があるので、多くの色をあげてみてはどうかという提案があり、計10色の色をあげ、それに名詞をつけていく実験を行った。

  3. 1および2で行った実験結果は、無残な作品群となり失敗。三人は皆しゅんとしてしまった。

  4. 何故失敗したか考察した。1の実験はまったくのフリーで行ったため質問と答えがまったく意味をなさず、ただのナンセンスに終わってしまった。ある程度の枠を決めて行えばもっとましな結果になっていたかもしれない。2の実験は、「色」というものがイメージの喚起が強い概念であるため、「色」が連続していると、読むときにイメージの激しい揺さぶりがあり、頭がそれを拒否するのではないか、との推論がでた。

  5. 2008年1月26日に予定しているマイケル・ファレル氏小講演会/リーディングについて、ファレル氏の講演内容を検討。ファレル氏自身の創作と彼が興味をもっている数人の詩人、それに加えて「視覚詩」などの試みについての意見をうかがうことに決定。

  6. 「第一回・言語実験工房賞(2007年度)」の受賞者および商品を決定。(「言語実験工房賞」:各年度に出版された詩集の中から、われわれ3人の目についた実験的かつ優れた詩集に送られる。次年度も継続的に選考予定)受賞者・商品の発表については後日、当サイトに記載する。

□オーストラリア詩人マイケル・ファレル(Michael Farrell)氏・小講演会+リーディング(2008年1月26日)

司会・湊圭史

ファレル氏自己紹介:
オーストラリアの田舎町で育ったので、周りに文学的環境はなかった。遅れて大学の創作科に入り、始め散文作品を書いていたが、詩のほうに徐々に移ることになった。そのことで伝統にとらわれずに、自分の書きたい方法を模索することができた。「実験的experimental」という言葉は自分の興味のあるスタイルが従来ないものなので、それをとりあえず言い表すために便利なので使うことがある。が、自分は「実験的」であるとは特に思わない。

>>前半

マイケル・ファレル氏の簡単な自己紹介の後、詩集『ode ode』と『a raiders guide』掲載の詩のリーディングと解説があった。

  1. Living at the z シリーズより "vidcore"
    • タイトルは、Tammy Wynette(アメリカのカントリー歌手)の歌のタイトル 'd-i-v-o-r-c-e' のアナグラムである(テクスト下に明示)。"vidcore"は造語だが、videoとhardcoreを想起させる。
    • 引用部分は、そうでない部分よりも小さいフォントで表記してある。通常、引用はクォーテーションで囲むが、引用部分の意味が強調されないようこのようなフォントで表記してある。引用による権威づけは排除して、歌などの雰囲気を漂わせることが狙い。
    • この作品だけではなく、一連の詩は、キャピタリゼーション、カンマ、ピリオド、クォーテーションマークが一切ない。これはすべての言葉を平等に扱うという意図がある。
  2. school シリーズより "my mind doesnt think so"
    • このシリーズは全文、二人の有名詩人からの引用によるコラージュ作品である(どの詩人かはとりあえず秘密、とのこと)
    • モダニズムに行われたコラージュやガートルード・スタインのスタイルにも影響を受けたが、それよりも、98年頃に流行したエレクトリカル・ミュージック(DJ Shadow、トータスヘッド)などの単調な感じのするサンプリングを意識した。ヒップホップ的な盛り上がりよりも、フラットな詩。
    • 誰でもが使える手法(サンプリング)を用いることで、オリジナリティーの違ったとらえかたができると考えている。
  3. 「ode ode」
    • 3行のみを、繰り返しを工夫することで詩に仕立てている。現代詩では繰り返しは普通嫌われるが、スタインなどに参考例が見られる。
    • 完全には意味をなさないフレーズ、文の断片の使用。これもスタインからの影響を受けている。
    • ジョン・ケージの伝記を読むことでヒントを得た「偶然」の利用。サイコロを振って一行のシラブル数や全体の行数などを決定する。そのことで、詩に構造structureを与えることができる。これは従来の伝統=定型詩と自由詩という対立の枠組みに入らない、型をもつがフレクシブルな詩作法である。
    • アンダーライン(_____)の使用。繰り返しをくどくならないようにして、詩を成立させるためにここでは用いた。従来とは違う句読点などの記号(punctuation)の使用法。
  4. 「vda」(『a raiders guide』より)
    • オーストラリアの詩人Dorothy Porterの "pmt" という詩の統計的な文字の再配置を行っている。
    • 文字の再配置には、オリジナル作品における統計的出現頻度の高い文字を、英語一般における統計的出現頻度の高い文字に置き換えるという手法を用いている。(例えば、英語で一番用いられる文字はeなので、オリジナルの詩でいちばん多く登場する文字をeに置き換える、など。)従って、英語ではないが、文字数の割合という点だけから見るともっとも「英語的」な詩である。
    • 暗号解読の本を読んで、普通とは違う言語の捉えかたに興味を抱いて試してみた。
    • 英単語と同じに(例えば、areやarts)になっている部分があるが、それはまったくの偶然である。
    • 普通の言語観から言えば完全にナンセンスであるが、何度も読んでいるうちに、一種の意味があるように思えてくる。これは音楽がいわゆる意味という視点からは理解できないが、かといって私達に意味がないとは言えないのと同じように、音(文字)のつらなりを通して、読むことの効果という点で私達にある種の意味を伝えているのだ。
    • また、これを読んだ体験のあとで、通常の詩を読むと視点が変わるのではないか。
>>後半

詩集『BREAK ME OUCH!』から "CLOUD" のパフォーマンス。質疑応答。

>>終了後、京都駅近くの居酒屋で意見交換。

>>追記:2月3日にも、東京・六本木の国際文化会館にて、ヤリタミサコさん主催でマイケル・ファレル氏を招いた勉強会が開かれた。テーマを「偶然chance」に的を絞って詩を紹介、オーストラリア詩の近況も報告していただいた。Laurie Duggan, Gig Ryan, Pam Brown, Jill Jones, John Tranter らのすでに評価が確立している詩人から、Amanda Stewart, Patrick Jones, Peter O'Maraら、年代の若く、さまざまな媒体にわたって活躍をするアーティスト、Lionel Fogarty,Sam Wagan Watson ら先住民の詩人、Atif Kheryら中東から移民してきた詩人が興味ぶかいとのことだった。




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