杉浦コメント:非常にバランスの取れた授業です。導入やまとめが目的をしっかり伝えていること、板書計画がしっかりしていること、ちょっとした実物を持ってきて実験しているなど、よい点が重なってよい授業になっています。小さな工夫をまねしてほしい授業です。


シナリオ型指導案 高校生物 酵素のはたらき
 
本時の目的
酵素の性質を知るために、身近なものを例として酵素の存在を確かめる。
さらに、酵素という物質の存在を知ることで、生物という教科で学ぶことは、身の回りにあふれている出来事にとても深く関係していることを知ってほしい。
 
本時のメッセージ
酵素とは、本の上でしか知らない物質ではなくて、実際に身の回りで大活躍している身近な物質であることを理解してほしい。同時に、生物という教科自体も身近なものとして捕らえてほしい。
 
指導過程
「では授業を始めます。
 
今日は、『酵素』というものについて勉強します。酵素って聞いたことある??よくCMで酵素の力で元から落とす!!みたいな売り文句の洗剤が売っていたりするんですが・・・あぁそうですか・・知りませんか。この酵素を詳しく紹介しましょう。酵素って実は身の回りにたくさんあるんです。」
 
(発問@)「ところで我が家の昨日の晩ご飯はハンバーグだったんですが、みんなは昨日何食べた??」
(解答予想@)魚〜。米。サラダ。肉。スープ etc.
 
「どれもおいしそうですね〜。」
 
(発問A)「じゃぁ、ちょっとお肉に注目してみよう。例えば、みんなが食べている食べ物って炭水化物とか無機質・タンパク質からできていたよね。お肉って何でできているか知ってる?」
(解答予想A)タンパク質!!炭水化物!!etc.
 
「正解は・・タンパク質です。よく覚えていたね。間違っていた人も問題ないよ。中学校の内容だから忘れちゃうよね。今、覚え直そうか。」
 
「ではでは続き。お肉は口から体の中に入ると、胃に運ばれて中でどろどろに溶かされます。『消化』だね。これはみんながゆっくりテレビを見てたり、おしゃべりしている間に勝手に起こります。頭の中で、よし溶かすぞ〜〜って考えている人いないよね。
実はこれ、めちゃくちゃすごいことなんです。」
 
「タンパク質でできている『お肉』を試験管の中に入れて、どろどろに溶かそうと思ったら、濃塩酸っていう物質を入れて、100度くらいのお湯でぐつぐつと何時間も煮込んでやっと溶けるんです。」
「でも、みんなはさっき言ったように、お肉を食べても寝転んでるだけでタンパク質を溶かすことができます。体温を100度まで上げる必要も無いし、体の中で濃塩酸を作る必要も無い。なんで??ここで大切なのが『酵素』の働きなのです!!この仕組みを詳しく調べましょう。」
 
ここまでの発問で、今日習う内容の『酵素』はとても身近にある物質だということを感じさせる。
 
「物質を違うものに作り替える反応を『化学反応』といいます。消化みたいに、タンパク質っていう物質を、溶かす・・つまり分解することも化学反応。逆に、二つの物質をひっつけて新しい物質を作る、つまり合成する。これも化学反応。この化学反応は、滅多なことじゃ起こらないようにできてます。そうじゃないと、あっちこっちでいろんなものが突然燃えたり、溶けちゃったりして大変だからね。100度とかの高温まで温度を上げないといけないとか、ものすごく強い酸性の液体につけないといけないとか反応が起こる条件をとても厳しくしています。
 
ところが世の中には、この化学反応を簡単に起こすことができるようにする魔法の物質があります。これを『触媒』と言います。」
 
〜板書計画@〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
触媒 … 化学反応を促進する物質。
     ただし、それ自身は反応の前後で変化しない。
(例)
   過酸化水素 → 水 + 酸素
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「過酸化水素って知ってる??オキシドールっていう消毒液に含まれている物質なんだけど・・・みんなはマキロンって言った方が知っているかな?これを試験管の中に入れて放っておくと、水と酸素に分解されて過酸化水素の中から酸素が発生して気泡ができるんです。」
「でもね・・・この反応はすご〜〜〜〜くゆっくり進むから、5分くらい待っても酸素の泡は3つか4つくらいしか見ることができません。実際に今から前でやってみましょう。見えない人は前まで出てきて見てくださいね。」
 
**実演@*******************************
用意するもの…試験管(2本)・過酸化水素・試験管立て・二酸化マンガン・レバー
手順 @ 試験管の中に過酸化水素を注ぎ、2〜3分放置する。
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「ところが・・・この中に『酸化マンガン(W)』という石ころを放り込んでやると・・・」
 
**続・実験@*****************************
手順 A 手順@の試験管に二酸化マンガンを入れる。
************************************
 
「あら不思議、泡がぼこぼこ出てきて、たくさんの泡のせいで液体が真っ白になっちゃいます。これは過酸化水素を水と酸素に分ける反応が、酸化マンガン(W)によって促進されて起こる現象です。はい、では一度席にもどってノートを取りましょう。見ただけだと忘れてしまうからね!!メモすることが大切なんです。そしたら、後でふとノートを見たときに今日やった実験が頭に思い浮かぶはずです。」
 
 
 
〜板書計画A(@に加筆)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(例)
   過酸化水素 → 水 + 酸素
         ↑
      酸化マンガン(W)雲形吹き出し: 急激に進む。
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「この酸化マンガン(W)みたいに、ゆっくりしか進まなかった化学反応を急速に進めてくれる物質を触媒といいます。
酵素の話じゃないじゃんって??実はね・・・これは酵素の話なんです。
触媒の中でも、生物が体の中で作る触媒は特別に『酵素』という名前で呼ばれています。」
 
〜板書計画B〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
酵素 … 生物の体内で作られる触媒。
(例)
   過酸化水素 → 水 + 酸素
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「さっきも出てきた過酸化水素を・・・何回も言うけど消毒液の成分ね。からだの怪我をしていないところにかけると、別に変化は起こりません。あ〜指が水に濡れたなぁ・・ってかんじ。
 
ところが転んで怪我して血が出ているところにかけてみると・・・。泡がしゅわしゅわでてきます。
 
これはね・・細胞の中ではカタラーゼという物質が作られています。怪我をするってことは、細胞が壊れちゃうってことです。細胞が壊れると中からこのカタラーゼが出てきて、過酸化水素と出会います。すると、このカタラーゼという物質は、過酸化水素を酸素と水に分解する反応を促進する働きを持っているので、どんどん過酸化水素を分解して、結果として発生した酸素がたくさんの泡になって現れるんです。
このカタラーゼのような物質を『酵素』といいます。みんなの体の中ではこの『酵素』がたくさん作られています。『酵素』ってよくわからない未知の物質なんじゃなくて、体の中ではあちこちで作られているすごく身近にある物質なんだよ。では、実際にやってみましょう。ただし・・・今ここで頑張って怪我するのは先生ちょっといやです。というわけで・・怪我をする代わりにこれを使いましょう『レバー』です。レバーは体のどこからとれるかというと『肝臓』です。実は、肝臓の細胞もカタラーゼを作っているんです。だから、肝臓を切ることで、みんながこけて切り傷を作ってしまったときの代理をしてもらいましょう。」
 
**続・続・実演@*********************************
手順B 試験管に過酸化水素を注ぎ、その中にレバーを入れる。」
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「見ての通り、たくさん泡が出てきましたね〜〜。じゃ、これも忘れないようにノートに書いて起きましょう。」
〜板書計画C(Bに加筆)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
(例)
    過酸化水素 → 水 + 酸素
     ↑
      カタラーゼ雲形吹き出し: 促進
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「酵素や触媒は、化学反応を助けるけど、自分自身は違う物質に変わったりはしないんです。つまり、過酸化水素を一個、水と酸素に分け終わったら、そのまま次の過酸化水素の分解に取りかかる・・って感じです。次から次へと相手を分解していくことができるから、酵素っていうのは少しの量があれば膨大な量の相手を分解することができます。
 
酵素という物質は、カタラーゼだけじゃなくてたくさんの種類が体の中にあります。細胞のなかで化学反応を助けているものもあれば、細胞の外に出て・・細胞の中で作られた物質が、細胞の外に放り出されることを『分泌』といいます。細胞から分泌されて、細胞の外側で化学反応を助ける酵素もあります。有名なものとしては、消化を助ける『消化酵素』があります。紹介していきましょう。」
 
(発問B)「たとえば・・・お米!!これの主成分は何でしょう!!」
(解答予想B-1)・・・・
(ヒント)「じゃあ、ヒントです。この成分は、中学校で習ったことがある、光合成で作られて、ヨウ素液で青紫色に染まる成分です。」
(解答予想B-2)デンプン!!
 
「そう。デンプンです。このデンプンがどうやって体の中で分解されていくのか見てみましょう。」
 
(発問C)「まず・・・お米を食べて口でかみます。すると・・口の中でお米は何と混じりますか??」
(解答予想C)つば!!唾液!!
 
「正解。唾液ですね。実は唾液の中にはデンプンを分解するための酵素が含まれています。その酵素の名前をアミラーゼといいます。アミラーゼの力を借りて、デンプンはマルトースという物質に分解されます。」
 
 
〜板書計画D〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
デンプン → マルトース 
     ↑
   アミラーゼ
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「マルトースは糖の一種です。むかしお母さんに言われませんでしたか?ご飯はよくかんで食べましょうって。ご飯はよ〜〜〜〜くかむと、中に含まれているデンプンがマルトースという糖にどんどん変わっていくからだんだん甘くなっていきます。読んだことある人がいると思うけど、麒麟の田村が書いてた「ホームレス中学生」に出てた『味の向こう側』ってやつですね。あ、知らない。そう。気にしないでください。
話は戻ってマルトースに変わったデンプンですが、マルトースは人間の体が取り込むにはまだまだ大きすぎて、吸収することができません。さらに、小さく分解されます。そのときは、すい臓から作られるすい液の中に含まれるマルターゼの力を借ります。」
 
〜板書計画E(Dに加筆)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
デンプン → マルトース → グルコース
     ↑       ↑
    アミラーゼ  マルターゼ
    (唾液)   (すい液)
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「最終的にグルコースという名前のとても小さな物質に分解されて、小腸から体の中に吸収されます。こんな風にみんなが食べたお米は、生きていくためのエネルギーに作り替えられています。ちなみに、覚えるときにマルトースやらマルターゼやら、似たような単語が出てきて覚えにくいよね。ちょっとした覚える手助けなんですが、酵素には語尾が「アーゼ」ってついているものが多いです。アミ「ラーゼ」とかマル「ターゼ」とかね。そういう語源を知っておくのも、理解する手助けになりますね。
 
 では、いよいよ最初に話題にあがった『タンパク質』。これはどうやって分解されているのかを見てみましょう。」
 
〜板書計画F〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
タンパク質 → 断片
      ↑
     ペプシン
     (胃液)
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「お肉に含まれるタンパク質は、デンプンみたいに唾液の中に含まれている酵素では分解されません。」
 
(発問D)聞くのに飽きかけていた子の方を向いて質問
「お肉は口から入ったら次はどこに運ばれるかわかる??」
(解答予想D)胃
 
「正解。胃の中に落ちるね。胃では胃液と呼ばれるものが分泌されていて、この中にはペプシンという名前の酵素が含まれています。この物質を使って、タンパク質は小さな断片に切り分けられます。
 
 ただ・・まだまだこのままでは大きすぎて吸収できないので、違う酵素を使ってまだまだ切り刻みます。」
 
板書計画G(Fに加筆)〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
タンパク質  →  断片  →  小断片  →  アミノ酸
       ↑      ↑       ↑
     ペプシン    トリプシン  ペプチターゼ
     (胃液)    キモトリプシン
              (すい液)
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 
「断片はトリプシンかキモトリプシンという酵素によって小断片に、さらにペプチターゼという酵素によってアミノ酸に分解されます。これでやっと体の中に吸収することができる形に変わります。
 毎日毎日ご飯を食べた後にはこんな反応が体の中で行われていたのです。びっくりだね。
 
・・ところがこの万能スターの酵素には・・・弱点があります。
酵素はね、生物の体の中で作られるんです。ということはつまり・・・体の中にある材料を使って作らないといけない。体の中にある物質で、余るくらいたくさんあるものはなにかな〜〜〜って探して見つかった材料は、タンパク質だったんです。なので、酵素はタンパク質を主成分として作られています。結果・・・こんな弱点があります。」
 
(発問E)「みんなが知ってる卵!!これも主成分はタンパク質です。卵は割った瞬間は白身がぷるぷるしていて透明ですよね。じゃぁこれをフライパンにのせて加熱するとどうなる??」
(解答予想E)固くなる。白くなる。
 
「正解。ぷるぷるだった白身は固くなってしまって、加熱する前とは違うものに変わっちゃいますよね。今日はみんなに見てもらおうと思って、目玉焼きをつくってもって来ちゃいました。」
(目玉焼きを取り出す)
 
(発問F)「目玉焼きを作ってきたんですが・・・私が今食べたいのは、卵焼きなんです。だれか!!目玉焼きをもとの生卵に戻せる人はいませんか??一回もとに戻して、卵焼きにしてください!!」
(解答予想F)無理!!だまる。など
 
「そうです。みんなも知っての通り、目玉焼きは二度とぷるぷるの卵には戻らない。実は卵の主成分のタンパク質はとっても熱に弱くて、高熱を加えると、違う物質に変わってしまうという性質を持っています。これを『変性』と言います。そして、一度タンパク質が壊れてしまったら、決してもとには戻らないのです。だからタンパク質でできている酵素も、熱にはとても弱いのです。」
 
板書計画H〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
酵素の主成分は 『タンパク質』
酵素の弱点
    熱に弱い。
    酸性やアルカリ性の物質に弱い。
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「他にも、牛乳にもたくさんのタンパク質が含まれているんだけど、牛乳にお酢を混ぜたことがある人はいますか??」
 
やったことない〜〜。知ってる〜〜〜。など口々に。
 
「やってみましょう。」
 
**実演A**********************************
用意するもの…コップ(1個)・牛乳・酢・マドラー
手順@ コップに牛乳を注ぐ。
手順A 手順@のコップに酢を注いでマドラーで混ぜる。
手順B しばらく放置する。
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「見ての通り、牛乳にお酢を混ぜてみると、牛乳がだんだんもろもろになってきます。最終的に透明な部分と白い部分に分かれてしまいましたね。これは、タンパク質には酸性の物質と混ざると性質が変わってしまうという性質があるからです。そして、これも一度もろもろになってしまうともとには戻りません。だからさっきと一緒。タンパク質が酸性の物質に弱ければ、酵素も酸性の物質に弱いんです。他にもアルカリ性の物質にも弱いです。
 
 こんな特徴のある酵素は、毎日君たちの体の中で活躍してくれています。ありがたいね。是非、ご飯を食べながら酵素に感謝してください。みんなが日頃何気なく生活している間も、体の中ではいろんな化学反応が起こっています。生物の授業って実はそんな不思議を追求していく授業でもあるんですよ。是非是非、体の中のいろんな不思議に興味を持ってみてください。そしたらきっと、授業での発見もたくさん増えるとおもいますよ。
 
では、今日の授業を終わります。」