エビ消費大国・日本の『罪』97/09/10

アジア養殖池開発招く

   技術に課題 
   数年で退廃

       環境破壊指摘する声

 エビチリソース、天ぷらうどんなどエビが入った料理はどれも大好物。エビの赤い色にはどこか高級感が漂い、子供のころは運動会や遠足の弁当にエビフライを入れてもらうのが楽しみだった。それが今では、日本は世界1のエビ消費国となった。ほとんどを輸入に頼り「世界中からエビをかき集めている」と言われる。いえでも外食でも登板回数が増え、ありがたみが薄れるくらいだが、こんな“ぜいたく”はいつまでも続くのだろうか。(湊口 智子)

おいしい解凍物

 兵庫県伊丹市の関西スーパーマーケット中央店。魚売り場ではインドネシアなどから輸入されたエビが並んでいる。薄く赤みがかった天然物のホワイト系、黒い養殖物のブラックタイガーが目立つ。
 水産業界では、エビは刺身の盛り合わせやマグロと並ぶ人気商材とされている。同店でもエビは魚介類の売り上げの約7%。第1商品部第1課バイヤーの松本宏義さんは◆和洋中どの料理にも使える◆ヘルシー志向に合う魚介類の中で骨や臭いがなく食べやすい◆冷凍なら特売の時にまとめ買いして計画的に使える──と、買い物客がエビを選ぶ理由を分析する。
 冷凍か解凍の状態で販売される輸入エビは通常、生産国で頭などを取った後、2s前後の氷の固まりになって日本へ運ばれ、店頭に並べる前に1度解凍される。解凍物はそのままトレーなどに並べ替えて販売されるが、冷凍物は並べ替えてからもう1度凍らせている。解凍物の方が、冷凍の回数が1回少ないため、おいしいという。

頭打ちの輸入

 エビが日本の食卓に普及するようになったのは、1980年代初めにブラックタイガーの養殖が台湾で本格化したのかきっかけ。低コストで安定的に生産されるようになったうえ、日本経済も成長期だったため、輸入量がどんどん増えた。日本水産物輸入協会の調査によると昨年の輸入は20万9186トンで、20年前の2.3倍。天然物も含めた1キロ当たりの平均輸入価格も1774円から1178円に下がった。
 しかしここ数年を見ると、94年の30万3723トンをピークに2年連続で数%ずつ減少するなど頭打ちとなっている。輸入価格も93年を底に数%ずつ上昇している。ブラックタイガーの養殖が本格化して以来、初めての状況だ。
 輸入エビを産地国別で見てみると、トップはインドネシアで6万4千トン。続いてインド5万5千トン、タイ3万3千トン、ベトナム2万8千トン。養殖技術を開発した台湾は2千トン弱で12位。数量はピークだった87年の4万9千トンのわずか3.8%に落ち込んだ。台湾だけではない。中国も90年、タイも93年をピークに下降線をたどっている。変わって増加が目立つのがインドだ。

過密養殖の弊害も

 なぜこのように産地が入れ替わるのだろう。エビ卸最大手、大栄太源海外事業部長の前田勝利さんは、養殖池の技術的な課題を指摘する。
 エビの養殖は海岸のマングローブ林などを造成し、1f程度の人工池を造って行われる。海水に地下水を混ぜるなどして海水よりも塩分の低い水を入れ、羽車を回転させて水に酸素を送り込む。そこに人工的に大量に卵を生ませてふ化させた稚エビを20万−40万匹放す。魚粉やビタミン剤などを混ぜた配合飼料を日に数回与え、4ヶ月から半年で、用途に応じた大きさに育てる。
 徹底した管理で生産性は高いが、効率を追求するあまり、過密養殖で病気が蔓延して池のエビが全滅することも珍しくない。また、食べ残した餌やエビの排泄物で池の土壌や周辺の海が汚染され、平均5年程度で池その物のが使い物にならなくなる。
 生産は、新しい場所に池を造って続けられるが、適当な海岸線がなくなれば、その国のエビ養殖は廃れてしまう。跡地は、塩分を含んでいるために再利用は難しい。いわば土地の“使い捨て”で成り立っており、上智大学外国語学部教授(東南アジア社会経済論)の村井吉敬さんは「日本人のエビの食べ過ぎが、乱獲や養殖池の開発による東南アジアの環境破壊につながっている」と批判する。
 養殖業者側も池底をゴムで覆うなどの対策に取り組んでいるが、決定的な解決には至っていない。前田さんは「今の技術では、池を次々と開発しなければ供給が減少するが、環境保護のために強い規制を設ける国がでてくるなど、だんだん養殖場所の確保が難しくなってきた」と話す。
 しかも、中国や韓国など経済発展するアジア各国での需要が高まり日本が独占的に輸入することができなくなってきた。規格や品質に過敏なまでこだわる日本より、多少値段が安くなっても他の国へ売ろうという動きもあるという。エビが食卓に上がる回数が、これからは少し減りそうな雲行きなのだ。(97/9/7 讀賣新聞) 

 


エビ好き日本人もう満腹!?97/09/03

          

  2年続きで輸入減   輸出国も対応探る  

 

年間約30万トンとエビ輸入大国・日本の輸入量が1995年、96年と2年連続で減少している。今のところ「輸入が上向く気配はない」(水産庁)状況で、エビ好きと言われる日本人の胃袋もさすがに満腹と言うところか。

 関係者の間ではすでに、エビ需要の落ち込みがどこで止まるかが焦点になっており、国内で輸入戦略の見直しが進む一方、インドネシアなど東南アジアでは輸出先を米国などにシフトする動きも出始めている。
 61年の輸入自由化以降、安価な海外物が大量に出回り、消費はすさまじい勢いで伸び続けた。この数年の輸入量は30万トン前後で、61年の輸入量、4千57トンの約75倍に当たり、一人年間2.5キロ食べている計算になる。

 しかし最近は結婚式やパーティの宴会料理でも「残す客が多く、エビ料理はピーク時と比べると少なくなっている」(大手結婚式場)という。輸入自由化まではなかなか口にできなっかたエビも、今ではありがたみが薄くなったようだ。

 日本人が年間に食べるエビの約90%は輸入でまかなっており、インドネシア、インド、タイ、などの東南アジアからの冷凍物が大半を占める。需要が減る中で流通業界では、冷凍しただけではなく「現地で皮をむいてパック詰めした商品を入れる」(ダイエー)など利便性を考慮した品揃えに取り組んでいる。現地ですしネタに加工して輸出するケースもある。 日本人のエビ好きに目を付けた輸入業者と、外貨を手っ取り早く稼げる輸出国の思惑が一致したエビ商売だが、輸出国には新たな対応が急務である。(京都新聞97/09/02より)


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